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春夏秋冬
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米澤榮三の連載コラム「春夏秋冬」

「春夏秋冬」は横浜市建築事務所協会の広報誌「HAMAKEN」に1997年4月から10年の間雑文を綴ったものです。協会会長職にあり、建築家の感性を会員や市民の皆様にご理解いただきたい一心で執筆致しました。最終の一年分を掲載しています。




春夏秋冬.120「弥生」

弥生の文字に上巳の節句。一気に春めく。柑橘類の山吹色。

椿の唐紅。紅白梅に緑萼梅。辛夷の純白色が加わり、順次待たれる花々。


深夜の帰宅。渡る風に春の気配。西空にはオリオン座。雄姿を誇った冬。心待ち霞み始めたこの季節。


設計に身を置いた若い頃。思想のない設計はガラクタ建築と教わる。

世は高度経済成長期。設計界は西欧に傾倒、追随。違うと反発。

日本人の思惟構造を学ぶ。その後、仏教に打ち当る。大いに困った。


地域の禅僧が座る勧め。以来、毎日曜、朝6時。禅堂で結跏趺坐。

禅の渡日時と同様の作法。参禅者達は自身の人生極めが目的。相違する目的に恥ながらも坐る。


正月。闇の路地。直日の若水が氷る。春は曙。睡魔に警策の音。

夏は輝く朝日。藪蚊と禅声。秋は澄んだ空気。読経が凛と響く。冬は寒厳。袴の膝が微動。


座禅後茶礼。栄西の運んだ茶の恩恵。臨済宗と茶道の深奥を知る。

利久茶から継承される文化。日本人の美意識に自然観が密着。


狩猟の縄文時。稲の弥生時。

農耕民族の自然環境との関係は、死活問題。山川草木に神々の存在は当然の節理。 神道を学ぶ。


八百万の神と人間。四季に催す祭祀。地型や歴史が異なる地方。独特の祭が誕生する。

柳田国男の民俗学。日本人の祈りと生存が読め哀愁感を覚える。
日本人の意識改革は維新。明治後期、三権分立の上に軍部の統師権。

天皇を神格化し、陰謀がポツダム宣言まで続く。国民は一時代を凌ぎ終戦。今度は米国の文化が。


現在の日本は、経済価値が最優先になった。思想のない建築で満足する国民だろうか。

気を入れ直し、街の形成に頑張りたい。
春夏秋冬のある日本、この国に生まれ、つくづく良かったと思う。


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