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春夏秋冬
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米澤榮三の連載コラム「春夏秋冬」

「春夏秋冬」は横浜市建築事務所協会の広報誌「HAMAKEN」に1997年4月から10年の間雑文を綴ったものです。協会会長職にあり、建築家の感性を会員や市民の皆様にご理解いただきたい一心で執筆致しました。最終の一年分を掲載しています。




春夏秋冬.115「燈火」
朝夕の涼しさ。蒼天の雲形状。日差しに薄の輝き。可憐な草花。そして、釣瓶落しの夕刻。秋の夜長。虫の音も最盛期が過ぎ、秋が訪れた。収穫の。食欲の。芸術の。スポーツの。どの秋も素敵な時間。
 27日から読書週間が始まる。時折、新刊も手にするが、古書に嵌っている。3年前。建築コンクール現地審査の際、司馬作品・坂の上の雲を再読。以来、街道をゆくを主に古書店通いが。現在継続中。

古書の大家は司馬さん。作品構想時、登場人名がある書はと、古書店に依頼。続々送達。
その数は2万冊を超え、記念館で保管とか。

昨夏、木村先輩から銀閣建立の書を頂戴する。
読後、若い頃興味を持った金閣寺放火事件を思い起こす。禅僧の放火は三島作品で有名。
 
水上勉作品がある筈と古書店巡り。無い。幾店かの主に捜索依頼。

某日、昼食後古書店へ。舗道のワゴン。
中に黒表紙に「金閣炎上」の白い文字。思いを馳せた一冊に感涙の心境。嘲笑る様に定価は百円。

貪る活字。放火犯人、林養賢の生い立ちから雲水時代、事件発生迄の知情意が記録風に書かれていた。20年の歳月を要した作品。警察、検察、裁判所での養賢と禅教書「碧厳録」との関係等読み堪えあり。

養賢と同郷の作者。郷土での取材を重ねる。警察調書後、保津川鉄橋から投身した母。息子の責任を母も背負う。嫁入り時迄及んだ。

肺結核で刑半ばで他界した養賢。放火の直接原因は薮の中。
墓参を想い若挟の地図を広げる。地図の地名に人々の悲哀を感じた。

中学時の修学旅行。あの金閣は昭和30年落慶。再建へ向け、老師が全国行脚。
資金調達した。10月10日、50年が経過し新時代を刻む。

誕生日に贈呈された本カバー。新緑の皮製。古書を包みティーテーブルの上。今夜も燈火で眠る。


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