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春夏秋冬
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米澤榮三の連載コラム「春夏秋冬」

「春夏秋冬」は横浜市建築事務所協会の広報誌「HAMAKEN」に1997年4月から10年の間雑文を綴ったものです。協会会長職にあり、建築家の感性を会員や市民の皆様にご理解いただきたい一心で執筆致しました。最終の一年分を掲載しています。




春夏秋冬.119「紅白梅」

暦は節分、立春。そして春の祭事が続く。

しかし、最も厳寒の時。襟を立てたコート姿。襟巻が手放せない。

反して移ろいの季節。水仙、椿、菜の花が春を運ぶ。


居住する金沢区は、社寺建築が点在する。鎌倉文化の影響である。

代表は実時の鎌倉文庫。江戸期は風光明媚な観光地として愛され、広重の浮世絵・金沢八景に残る。


近世になり、著名人が在住。伊藤博文、鏑木清方、直木三十五ら。

日本画家の川合玉堂もその一人。大正中期頃新築の別邸が、京急富岡駅近所に。月1回開放している。


昨年秋。玉堂別邸で案内役のT先生と駅頭で出合う。開放日に訪問の誘いを受け、11月表門を潜る。
樹間に主屋の茅葺屋根が見え、受付にT先生。自然雑木を活用した廻遊庭園。早速、案内を受ける。


建物は数奇屋造り。市指定文化財で外からの室内見学。

玄関右に書生部屋。左に客控室。広縁から茶室へ。形式に捕らわれない造り。

天井の形状や壁の色合いは、当時斬新であったろう。小豆色に画家としての拘りを感じ、巨匠を忍ぶ。


茶室北側に画室。浅い床の間。矩折りに廊下が廻り、作品を展示。

全て複写だが、開放に当り運営する人々の心使い。配慮に痛み入る。


一段小高い四阿跡へ。柱脚の石のみが残る。東京湾への展望は富岡宮の杜が中枢。

建築群が広がる。主はこの眺望が気に入っていたと。大正期は足元迄、潮騒があった筈。

 

屋敷内に2本の老松があり、二松庵と名付けたとの事。山からの水流を三色、

いや五色の水音にするよう、庭師に求めた逸話が残る。


玉堂の作品は、四季の風情に豊かな情感が溢れる。画題も詩情ある。

俳句を嗜んだ。今後、画壇には越える者が出ないだろう。丁重に御礼を述べ、表門の坂を下る。
庭の紅白梅。きっと今が盛りだ。




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