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春夏秋冬
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米澤榮三の連載コラム「春夏秋冬」

「春夏秋冬」は横浜市建築事務所協会の広報誌「HAMAKEN」に1997年4月から10年の間雑文を綴ったものです。協会会長職にあり、建築家の感性を会員や市民の皆様にご理解いただきたい一心で執筆致しました。最終の一年分を掲載しています。




春夏秋冬.111「青簾」
 
先月は記録的な長雨日。菜の花腐し、走り梅雨、春の長雨が続いた。
そんな天候を燕が飛び交い、新しい生命の誕生に一所懸命。

 本格的な夏を前に準備。青簾が細い雨に鮮か。隣では石榴の赤い花。可憐さはこの季節のもの。
 NHK第二放送。宗教の時間と言う番組がある。

一昨年、一遍語録をよむと題した放送を年間を通して聞いた。何処でも可能がそうさせた。
宗の一遍上人の認識が変った。総本山の遊行寺に興味が湧き、訪問を秘かに願っていた。

皐月晴れの午後。辻堂の建築計画地視察後、機会を得た。
境川に懸る朱色の橋。正面に黒い冠木門。表札は時宗総本山。通称遊行寺の穏やかな石畳を登る。

若い頃、一遍聖絵や洛中洛外図屏風で中世の建築史を学習した。

その折、おどり念仏や南無阿弥陀仏の極楽往生を知る程度で、ラジオ番組は時宗の深奥を教えた。

坂を登ると正面に本堂。銅板葺の屋根が漂とした印象。東側に一遍銅像。
生涯を遊行者とした姿らしく頬のこけた風貌。静寂に梵鐘の音。夕方5時の知らせ。

透われる様に鐘楼へ。立札には梵鐘の物語が。墓地を抜け裏山へ。
浄瑠璃の小栗判官照手姫の小栗堂。岨道には南部主従の墓。歴史を紐解く。

中雀門を抜けると宗務所と修業道場。庭には放生池。生物を放すと長寿の約束が。
池には、唱歌目高の学校で名高い藤沢目高が泳ぐ。

寺は道場を見ると解る。民衆に親しむ雰囲気が伝わる。
牡丹を始め数々の花が百花斉放。焚火の煙が、落ちる夕日に棚引いていた。

先月、竹下元理事が御逝去された。葬儀に出席。焼香する夫人の黒い後ろ姿。
憔悴仕切った目礼が痛々しい。若い僧の高く穏やかな時宗の読経。
数日前遊行寺を訪ねたのも何かの縁だろうか。合掌。


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